「八月のクリスマス」
(Christmas in Augst)
韓国映画 1998年 韓国ウノ・フイルム製作 1時間37分
監督:ホ・ジノ
脚本:オ・スンウク、シン・ドンファン、ホ・ジノ
撮影:ユ・ヨンギル 音楽:チョ・ソンウ
美術:キム・ジナン 照明:キム・ドンホ
出演:ハン・ソッキュ、シム・ウナ、シン・グ
日本の1960年代後半の“青春時代”を見ているような実にさわやかな恋愛映画である。主人公はソウル市内の町の写真屋で癌か何か不明だが不治の病を抱え数ヶ月の命と宣告されている。ところが、映画ではそのようなべっとりとした生活の背景は殆ど出てこない。不治の病という「期間限定」の中で、青春をどう生きるか、恋愛をどう駆け抜けるかが中心に描かれている。年とともに最近はほとんど忘れかけてしまっていた、石川啄木の初期の和歌のようであり、ハイネやゲーテの詩集のようにである。
8月のうだるようなある日、主人公の写真館に、高校生と見まがうようなういういしい美人の駐車違反取締職員の彼女が、写真をいますぐ現像をして欲しいと訪れるところから恋愛のきっかけが始まる。主人公は葬儀に参列したばかりで、持病もあって疲れている。「少し後に来てくれないか」といい、彼女を無視してソファに座りこんでしまう。彼女も後に引かずネガを置いて、真昼の炎天下、わずかな木陰で写真が出来上がるのを待ち続ける。かなりして仕事にかかった主人公から彼女が見える。主人公はアイスクリームを2つ買ってきて木陰で2人で仲良く食べる。
どこにでもある、全くの日常的な普通の風景から物語りは展開されていくのであるが、「期間限定」であることから、アイスクリームが溶けないうちに食べなければと思うような焦りの気持ちが見る側にも伝わってくる。と同時に、こちらの側が「期間限定」であることへの「遠慮」も働く。「八月」と「クリスマス」の間のたった5ヵ月の短い恋愛期間は日常生活のあきらめのなかに、かなりのプレッシャーと生の喜びを持ち込んだようである。きわめて計算された作品ではないか。
作品関連のホームページ
★ホ・ジノ監督インタビュー
http://www01.u-page.so-net.ne.jp/xa2/seochon/korean_movie/interview/int_heojinho.htm★第19回清龍映画祭 受賞リスト
http://www.geocities.co.jp/Hollywood/3732/cr19.htm★亜細亜電影迷倶楽部 韓国映画作品紹介
http://www2s.biglobe.ne.jp/~asiafilm/koreas.htm★99年1月 Cine21 183号(’98映画、フェミニズム成績表)
http://www.altasia.org/monsoon3/cine21_183htm★アジア電影劇場
http://www.bea.hi-ho.ne.jp/t-mac/Pages/asia.html★韓国映画データーベース
http://member.nifty.ne.jp/HYD/db.htm★みにキネマ福井
http://www.mitene.or.jp/~naichin/minicine/